固定比率を計算して長期安全性を分析してみよう
固定比率とは
固定比率とは、長期間運用される固定資産が自己資本(純資産)によってどの程度カバーされているのかを表します。
自己資本(純資産)は資本金や繰越利益剰余金などの返済義務のない合計の金額のことですが、「固定資産<自己資本(純資産)」となっている場合には、固定資産が自己資本(純資産)でまかなえているということですので長期安全性が高い、または長期安全性に問題がないということが言えるでしょう。
実際に固定比率を計算してみましょう
まず、貸借対照表の固定資産と自己資本(純資産)に注目してみましょう。
貸借対照表 | ||||
固定資産 | 純資産の部 | |||
有形固定資産 | 株主資本 | |||
建物 | 27,500 | 資本金 | 35,000 | |
減価償却費 | △7,500 | 20,000 | 資本剰余金 | |
車両運搬具 | 3,000 | 資本準備金 | 5,000 | |
減価償却費 | △500 | 2,500 | 資本剰余金合計 | 5,000 |
土地 | 22,500 | 利益剰余金 | ||
無形固定資産 | 利益準備金 | 2,500 | ||
特許権 | 2,500 | その他利益剰余金 | ||
投資その他の資産 | 繰越利益剰余金 | 5,000 | ||
長期貸付金 | 3,000 | 利益剰余金合計 | 7,500 | |
貸倒引当金 | △500 | 2,500 | 株主資本合計 | 47,500 |
固定資産合計 | 50,000 | 純資産合計 | 47,500 |
固定比率の計算式は、固定比率(%)=固定資産/自己資本×100%ですので…
固定比率(%)=50,000/47,500×100=105.263…
上記の貸借対照表では、固定比率の計算結果が105.26%となり、固定資産>自己資本(純資産)となり、自己資本不足の状態ですので、固定比率の計算結果からは長期安全性に少し問題があると判断することができるでしょう。
固定長期適合率を計算して長期安全性を分析してみよう
固定長期適合率とは
固定長期適合率とは、長期間運用される固定資産が長期資本(自己資本(純資産)と長期借入金(固定負債))によってどの程度カバーされているのかを表します。
長期間運用される固定資産は、自己資本(純資産)と長期借入金(固定負債)の範囲内でカバーされるべきですので、「固定資産<自己資本(純資産)と長期借入金(固定負債)」となっている必要があります。
つまり、、固定長期適合率は100%以下であることが必要ですので、もし100%を超えている場合には、早急に財務状況を改善する必要があると考えていいでしょう。
実際に固定比率を計算してみましょう
まず、貸借対照表の固定資産と自己資本(純資産)と固定負債に注目してみましょう
貸借対照表 | ||||
固定負債 | ||||
社債 | 2,500 | |||
長期借入金 | 30,000 | |||
固定負債合計 | 32,500 | |||
負債合計 | ……… | |||
固定資産 | 純資産の部 | |||
有形固定資産 | 株主資本 | |||
建物 | 27,500 | 資本金 | 35,000 | |
減価償却費 | △7,500 | 20,000 | 資本剰余金 | |
車両運搬具 | 3,000 | 資本準備金 | 5,000 | |
減価償却費 | △500 | 2,500 | 資本剰余金合計 | 5,000 |
土地 | 22,500 | 利益剰余金 | ||
無形固定資産 | 利益準備金 | 2,500 | ||
特許権 | 2,500 | その他利益剰余金 | ||
投資その他の資産 | 繰越利益剰余金 | 5,000 | ||
長期貸付金 | 3,000 | 利益剰余金合計 | 7,500 | |
貸倒引当金 | △500 | 2,500 | 株主資本合計 | 47,500 |
固定資産合計 | 50,000 | 純資産合計 | 47,500 |
固定長期適合率の計算式は、固定長期適合率(%)=固定資産/(自己資本+固定負債)×100%ですので…
固定長期適合率(%)=50,000/(47,500+32,500)×100=62.5…
上記の貸借対照表では、固定長期適合率の計算結果が62.5%となり、固定資産<自己資本(純資産)と長期借入金(固定負債)となりますので、固定長期適合率の計算結によれば、長期安全性が高い、または長期安全性に問題がないと判断することができるでしょう。
固定比率と固定長期適合率の違いとは
固定比率が100%を超えていても大きな問題はありません
固定比率の計算式は、固定比率(%)=固定資産/自己資本×100%ですので、固定資産の金額が自己資本(純資産)の金額を超えている場合には、固定比率は100%を超えてしまいます。
つまり、逆を返せば、固定比率が100%未満ということは、借り入れをしなくても、自己資本(純資産)だけで固定資産をまかなえているということになります。
この状態の場合には、ほとんど大きな借り入れをしなくても経営ができている状態だと言えるでしょう。
でも、開業したばかりのケースや少し大きな先行投資をしたばかりのケースでは、どうしても長期借入が必要になると思われますし、固定資産の減価償却も進んでいないので、そういうケースでは固定比率が100%を超えていてもそれほど大きな問題はないと思われます。
そういう場合には、それよりも、今後、毎期、利益を残していって自己資本(純資産)を増やしていくことができるかどうかのほうが重要であると考えていいでしょう。
固定長期適合率が100%を超えている場合には注意が必要です
固定長期適合率の計算式は、固定長期適合率(%)=固定資産/(自己資本+固定負債)×100%ですので、固定資産の金額が自己資本(純資産)と固定負債の合計の金額を超えている場合には、固定長期適合率は100%を超えてしまうことになります。
固定長期適合率が100%を超えているということは、自己資本(純資産)と固定負債の合計の金額では固定資産の金額をまかなえていないということですが、この状態は、例えば、遊休資産があるなど、固定資産への投資の失敗をしている可能性があり、会社の財政状態は非常に厳しい状態にあると考えることができます。
固定長期適合率が良くない場合には流動比率も良くないということになります
貸借対照表は、左側(流動資産と固定資産)と右側(流動負債と固定負債、純資産)が同じ金額になりますが、固定長期適合率が良くない場合には、流動比率(流動比率の計算式は、流動比率(%)=流動資産/流動負債×100)も良くないということがいえます。
経営というのはさまざまなところで連動していますので、どこかが良くなければそのことで他のことも良くなくなってしまう可能性があるということです。
この記事を書いたのは…
行政書士事務所/社会保険労務士事務所 ビジョン&パートナーズ
大阪市中央区備後町1丁目4番16号
備一ビル501号室
代表 高瀬満成(行政書士.社会保険労務士)
大阪で訪問介護やデイサービスなどの開業支援や経営支援をしている行政書士.社会保険労務士であり、大阪市にある訪問介護の事業所の役員もしています。
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