一般的に、次の2つのポイントがクリアできていれば飲食店の創業融資をしてもらうことが可能です
- 飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋など)での勤務経験があること
- 自己資金を計画的に貯めてきたこと
このポイントをクリアしている場合には、事業計画書の書き方に問題あるため融資される可能性を下げてしまうことだけは絶対に避けなければいけません。
このページでは、融資されやすくなる飲食店の事業計画書の書き方について記載させていただきたいと思いますのでぜひご覧ください。
必要な資金と調達方法の書き方
自己資金は必要な資金の4分の1程度にする
必要な資金 | 金額 | 調達の方法 | 金額 |
店舗、機械、備品、車両など (内訳) 店舗内外装工事 厨房機器 什器・備品類 保証金商品仕入、経費支払資金など (内訳) 仕入 広告費等諸経費支払 | 自己資金 親、兄弟、知人等からの借入 日本政策金融公庫からの借入 | ||
合計 | 合計 |
現在は、日本政策金融公庫の融資の要件として開業資金の10分の1以上の自己資金があればいいということになっていますが、以前は、自己資金は開業資金の3分の1以上が必要でしたので、やはり3分の1や4分の1という数字はある一定の基準になると考えることができます。
また、実際にも、多くの借入れをすることは、利息と借入金の支払いが多くなり、開業後のキャッシュフローや財務状況に悪影響を与えてしまう可能性が予想されますので、やはり、自己資金は開業資金の4分の1程度(もちろん、5分の1や6分の1くらいでも)を準備するほうが安全です。
事業の見通しの書き方
事業の見通しは借入金の返済原資になるフリーキャッシュフローを意識して記載する
創業当初 | 軌道に乗った後 | 計算の根拠 | |
売上高 | |||
売上原価 (仕入高) | |||
人件費 | |||
家賃 | |||
支払利息 | |||
その他 | |||
合計 | |||
利益 |
日本政策金融公庫の事業計画書の事業の見通しのところはすでに計算表が記載してありますので、あまり意識しないでこの計算表や計算の根拠の書き方をマネして記載してしまいそうになります。
もちろん、それでも問題はありません。
しかし、事業の見通しを記載する本当の理由は、売上の計算や経費の計算ではなく、借入金の返済原資になるフリーキャッシュフローの計算をするためであると考えることができますので、簡単なものでもいいですので、そのことを意識して事業計画書を作成することによって融資される可能性を上げることができるでしょう。
なお、日本政策金融公庫の事業計画書ではすでに計算表が記載されてしまっていますので、オリジナルの計算表を作成するほうがいいかもしれません。
創業の動機の書き方
日本政策金融公庫の飲食店の事業計画書の創業の動機の記載例は下記の通りです
これまでの経験を生かし、自分の店を持ちたいと思い、○○地区で物件を探していたところ、立地も広さもちょうど良いテナントが見つかったため
現勤務先の仕入業者から、○○○を安く仕入できることになり、事業の見通しが立ったため
実は、創業の動機は「経営理念」や「経営ビジョン」に関連して記載するほうがいいんです
- 創業の動機は、「事業計画書の中心となるもの」であり、「事業計画書をまとめたもの」である
- 今までの自分の経験を活かして、どのような飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)にしたいのか
- お客さんにどのような料理を提供して、どのような体験をしてほしいのか
- あなたの本質的な考え方として、飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の「経営理念」や「経営ビジョン」
つまり、創業の動機は、事業計画書(あなたの過去、現在、あなたやお店の未来を結ぶもの)の全体像を簡潔に表したものであり、あなたの飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の「経営理念」や「経営ビジョン」であると考えるといいでしょう。
なお、創業の動機は面接でも質問されることが予想されます。
しっかり準備しておきましょう。
経営者の略歴の書き方
日本政策金融公庫の飲食店の事業計画書の経営者の略歴の記載例は下記の通りです
平成○年○月 居酒屋○○○ ○年勤務(学生時代のアルバイト先にそのまま勤務)
平成○年○月 ダイニングキッチン○○(洋風居酒屋チェーン)○年勤務、○年前から店長(現在の月給○○万円)
平成○年○月 退職予定(退職金○○万円)調理師免許(平成○年○月取得)
実は、経営者の略歴は、あなたの職務経験を記載して、現在のあなたを知ってもらうために記載するほうがいいんです
- 経営者の略歴は、「履歴書」ではなく「職務経歴書」の書き方を意識して記載する
- その飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)での副店長などのポジションや担当していた業務の内容を記載する
- その業務を通じて得たことを記載する
つまり、経営者の略歴は、あなたの過去の経験を記載することによって、現在のあなたの能力やスキル、飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の経営者としての適性のようなものを知ってもらい、そして、今後のあなたやお店の未来を理解してもらうために記載するということです。
取扱商品・サービスの書き方
日本政策金融公庫の飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の事業計画書の取扱商品サービスの内容の記載例は下記の通りです
昼 日替わりランチ(○種類/ドリンク・デザート付き)○○○円
夜 一品料理○○○円~○○○円(旬の素材を利用した創作料理)、ドリンク○○○円~○○○円 客単価○○○○円
実は、取扱商品・サービスの内容は、お店のコンセプトを意識して記載するほうがいいんです
- オリジナルメニューや特徴的なメニューを記載する
- どのような雰囲気のお店にするのか
- どのような接客をするのか
- メニューの種類や価格などを競業他店と比較する
取扱商品・サービスの内容は、競合店に負けないオリジナルメニューや看板となるメニューなど、お客様にぜひ食べていただきたいと考えているメニューをいくつか記載するとともに、お店の雰囲気や接客方法などを記載することによってどのようなお店にしたいのかが伝わるように記載します。
つまり、どのようなコンセプトのお店にするのかということを意識して記載するといいでしょう。
日本政策金融公庫の飲食店の事業計画書のセールスポイントの記載例は下記の通りです
ワイン、ビール、オリジナルカクテル等○○○種類のドリンクを提供する
○○○的な雰囲気のある店構えにする
セールスポイントは、お店のコンセプトをまとめたものであり、お店のコンセプトの中心となるものです
- あなたのお店の強みの部分や自信のあるところを記載する
- あなたのお店の特徴を記載する
- お店のコンセプトとの関連性を意識して記載する
こうすればもっと良くなる!
取扱商品サービスの内容とセールスポイントの書き方は、コンセプト設定、3CやSWOT分析などのマーケティングの要素を意識して記載するともっと良くなります。
取扱商品サービスの内容とセールスポイントを記載する前に、あなたの飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)のコンセプトを、3C分析のうち(「自社・自店(company)」と市場・顧客(customer)」を意識して、5W2Hに分類して書き出してみましょう。
また、セールスポイントとは、SWOT分析のうちの内部環境分析である「自社・自店(company)」の強みの部分であると言えますので、上記のコンセプトを作成することによってセールスポイントを書き出しやすくなります。
このように論理的に書き出して事業計画書を作成することによって、自分自身の考えを整理することができるとともに、融資担当者の方にもわかりやすい事業計画書の書き方になるはずです。
取引先・取引関係等の書き方
日本政策金融公庫の飲食店の事業計画書の販売先の記載例は下記の通りです
一般個人(○○地区周辺の会社員、学生)
⇒店舗は、商業ビルが立ち並ぶ路地裏に位置する。周辺にセレクトショップ等があり、人通りは多い。
実は、販売先は、あなたの飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の商圏調査などのマーケティングの要素を意識して記載するほうがいいんです
- 一般消費者という書き方ではなく、ターゲットの属性を絞った書き方をする
- お店のコンセプトやセールスポイントとの関連性をしっかり意識して記載する
- あなたの飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)がどのような立地条件のところにあるのか
- 簡易的なものでもいいですので商圏マップを作成してみるとさらによい
飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の販売先、つまり市場・顧客(customer)は、一般消費者ではありますが、あなたのお店で想定しているターゲットとなるお客様はもっと絞られているはずですので、もう少し具体的に記載することによって、お店のコンセプトやターゲットを明確化することができます。
そして、出店しようとしている場所の立地条件があなたの飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)が想定しているターゲットとマッチしていることなど、そこに出店することを決めた理由などを記載する。
簡易的なものでもいいですので、あなたの飲食店(居酒屋・カフェ・ラーメン屋)の商圏マップを作成してもいいかもしれません。
日本政策金融公庫の飲食店の事業計画書の仕入先の記載例は下記の通りです
○○○酒店(○○区○○)
(現勤務先の仕入先)
○○○食品(○○区○○)
(現勤務先の仕入先)
仕入先の記載欄は、食材や飲み物などの仕入れ先を確保できているかを確認するためのものです
食材を仕入れて調理してお客様に提供するという飲食店の基本的なバリューチェーンの中で食材を仕入れるということは1番最初に来ることですので、仕入先の記載欄は、そこのところに問題がないかどうかということを確認するために記載するということです。
何社か仕入れ先がある場合には3社または4社程度を記載してもいいでしょう。
融資される可能性を上げるためのポイント
日本政策金融公庫の事業計画書をそのまま使わなくてもいい
日本政策金融公庫の飲食店の事業計画書の記載例には、右上のあたりに下記のような記載があります。
☆ この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です
日本政策金融公庫の事業計画書の用紙は各項目の記入欄はすごく小さいですし、事業の見通しのところもすでに計算表が設定されていて、全体的にすごく書きにくくなっていますので無理をしてこの用紙を使用する必要はありません。
この事業計画書の各項目を参考にして、各項目にそった書き方をしていれば問題はありません。
先日、当事務所で作成させていただいた飲食店(居酒屋)の事業計画書はこんな内容になりました
「1 創業の動機」でA4用紙1枚分
創業の動機は、本来は1番最初に作成するところですが、実際にはなかなか難しいところです。当事務所でアドバイスをさせていただき、ご依頼者の方にもがんばっていただき、事業計画書作成の1番最後に創業の動機を完成させました。
「2 経営者の略歴等」「3 取扱商品・サービス」「4 取引先・取引関係等」でA4用紙2枚分
これらの項目につきましては、上記の説明の通りの作成方法で記載させていただきました。
「5 従業員」「6 お借入の状況」でA4用約半分
この項目につきましては、日本政策金融公庫の事業計画書の用紙の内容に従ってほぼ同じ内容で記載させていただきました。
「7 必要な資金と調達方法」でA4用紙1枚分
日本政策金融公庫の事業計画書の用紙の内容に従っていますが、面接時に説明がしやすいようにもう少し詳しく記載させていただきました。
「8 事業の見通し」は創業当初と軌道に乗った後でそれぞれA4用紙1枚ずつ
日本政策金融公庫の事業計画書の用紙の内容を参考にしながら、面接時にも説明がしやすいようにポイントを押さえながら、ほぼオリジナルの内容で作成させていただきました。
あと、参考資料として…
簡易的な商圏マップA4用紙2枚分
できるだけ早く事業計画書を作成しなければいけませんので、簡易的なものですが、人口や従業員数などの分布を商圏マップとして作成させていただきました。
これも融資の申し込み時に提出しなくても、面接時にも役に立つ内容であると思われます。
「8 事業の見通し」について1年間の見通しを月次でさらに詳しく計算した資料A4用紙2枚分
飲食店の場合には季節変動がありますので、それを考慮した1年間の売上や利益などの計算書を作成させていただきました。
これも融資の申し込み時に提出しなくても、面接時にも役に立つ内容であると思われます。
自分で作成した事業計画書で融資される確率は20~30%程度!?
夢を実現するための第1歩として融資がされる可能性を上げることが重要です
融資がされるかどうかについては、いろいろな要素がありますので、もちろん専門家が事業計画書を作成すれば絶対に融資が下りるということではありませんが、多くの場合には、ご本人で事業計画書を作成するケースよりも専門家がご本人のことをヒアリングしながら作成した事業計画書のほうが融資される可能性が上がると考えることができるでしょう。