最も避けるべきことは、本来は融資されるはずのケースなのに、事業計画書の書き方が良くないために融資されなくなることです
ご相談にいらっしゃった方がご自分で作成した事業計画書を拝見させていただくことがありますが、このままその事業計画書を提出するとおそらく融資を受けることが難しいだろうと思われることがあります。
融資がされる可能性を上げることが重要です
融資がされるかどうかについては、いろいろな要素がありますので、もちろん専門家が事業計画書を作成すれば絶対に融資が下りるということではありませんが、多くの場合には、ご本人で事業計画書を作成するケースよりも専門家がご本人のことをヒアリングしながら作成した事業計画書のほうが融資される可能性が上がると考えることができるでしょう。
自分の美容室やエステサロンを持つということは、「自分らしく生きていく」ということ
当事務所では、あなたが自分の夢を実現し、自分らしく生きていくことを応援させていただいております。
創業の動機の記載例と書き方のポイント
日本政策金融公庫の美容室やエステサロンなど美容業の事業計画書の記載例には、創業の動機についてこのように記載してあります。
・美容業に従事して○○年、現勤務先での固定客もついてきたため、同じ美容師の妻とともに、店を持つことにした。
・○○駅の近くの住宅地に良い物件を見つけたため。
もっとこうするべき!
- 今までのあなた自身の経験を活かして、どのような美容室やエステサロンにしたいのか
- あなたの美容室やエステサロンでは、お客様にどのようなサービスを提供して、どのような体験をしていただきたいのか
- あなたの本質的な考え方として、あなたの美容室やエステサロンの「経営理念」や「経営ビジョン」
つまり、創業の動機は、あなた自身の今までの経験から導き出される、あなたの本質的な考え方としての「経営理念」や「経営ビジョン」を記載するといいでしょう。
経営者の略歴の記載例と書き方のポイント
日本政策金融公庫の美容室やエステサロンなど美容業の事業計画書の記載例には、経営者の略歴についてこのように記載してあります。
平成○年○月 ○○○○美容専門学校卒業
平成○年○月 美容室○○○○ ○年勤務
平成○年○月 ヘアサロン○○○○ ○年勤務(現在の月給○○万円)
平成○年○月 退職予定(退職金○○万円)美容師免許(平成○年○月取得)・管理美容師資格(平成○年○月取得)
もっとこうするべき!
- 経営者の略歴は単なる履歴書ではありません
- 今まで働いてきた美容室やエステサロンでのポジションなどを記載する
- その美容室やエステサロンでの業務の内容やその業務を通じて得たことを記載する
経営者の略歴は、履歴書のように時系列的に記載した簡潔すぎるものではなく、職務経歴書のように今までの職務経験をもう少し具体的に記載するといいでしょう。
つまり、経営者の略歴は、あなたの過去の美容室やエステサロンでの経験を記載することによって、現在のあなたの美容師やエステティシャンとしての能力やスキル、美容室やエステサロンの経営者としての適性を知ってもらい、今後のあなたやお店の未来を理解してもらうために記載します。
取扱商品サービスの内容の記載例と書き方のポイント
日本政策金融公庫の美容室やエステサロンなど美容業の事業計画書の記載例には、取扱商品サービスの内容についてこのように記載してあります。
・カット(シャンプー、ブロー込み)○○○○円
・カラー(カット、シャンプー、ブロー込み)○○○○円~
・パーマ(同上)○○○○円~
・トリートメント ○○○○円~
・ヘアケア商品販売(シャンプー等)○○○○円~
もっとこうするべき!
- サービスの内容や質、価格を競業店と比較する(差別化できるポイント)
- 特徴的なサービスを記載する
今までの勤務経験の中で、お客様から好評を得ている美容師やエステティシャンとしてのスキルや接客方法などを記載することによって、あなたの美容室やエステサロンを具体的に想像することができます。
また、競合店の価格や質を調査しておくのもいいでしょう。
セールスポイントの記載例と書き方のポイント
日本政策金融公庫の美容室やエステサロンなど美容業の事業計画書の書き方と記載例には、セールスポイントについてこのように記載してあります。
・髪にやさしい天然ハーブを主原料としたヘアケア剤(シャンプー等)を使用する。
・ハーブティのサービスと10分間のヘッドマッサージのサービスで、顧客に「癒し」を提供する。
もっとこうするべき!
- あなたの美容室やエステサロンのコンセプトを、3C分析のうち(「自社・自店(company)」と市場・顧客(customer)」を意識して、5W2Hに分類して書き出す
- セールスポイントとは、SWOT分析のうちの内部環境分析である「自社・自店(company)、つまり、あなたの美容室やエステサロン」の強みの部分である
- 上記のコンセプトからセールスポイントを書き出す
専門的なマーケティングということになると、非常に複雑なものになりますが、個人事業または小規模法人の形態で美容室やエステサロンを開業をする場合の事業計画書を作成する場合には、実際にはそこまでする必要性はあまり高くありません。
マーケティングの要素を意識した事業計画書の書き方をすることによって、より良い事業計画書になるはずです。
取引先・取引関係等の記載例と書き方のポイント
日本政策金融公庫の美容室やエステサロンなど美容業の事業計画書の記載例には、取引先・取引関係等についてこのように記載してあります。
・一般個人
・現勤務先での固定客約○○○人
⇒近くに○○○○○○があり、人通りが多いため、 新規客を獲得しやすい。
もっとこうするべき!
- あなたのお客様のうち、どれくらいのお客様があなたの美容室やエステサロンに来店してくれると予想できるのか
- 一般消費者という書き方ではなくあなたの美容室やエステサロンのターゲットの属性を絞った書き方をする
- 市場・顧客(customer)は上記のセールスポイントと連動していることをしっかり意識する
- あなたの美容室やエステサロンがどのような立地条件のところにあるのか
- どのように集客するのか、集客方法を記載する
取引先・取引関係等のついては、売上の見込みを記載することになるのですが、美容室やエステサロンを開業する場合には、美容師やエステティシャンとしてのあなたのことを気に入ってくださっているお客様がいらっしゃるはずですので、ある程度、売上の予測ができるところに強みがあると考えることができます。
もちろん、これだけでは継続的な利益をあげることができませんので、新規のお客様の獲得が非常に重要です。
最寄駅や主要な商業施設など、簡易的なものでもいいですので商圏調査を記載しておくといいでしょう。
必要な資金と調達方法の書き方と書き方のポイント
必要な資金 | 金額 | 調達の方法 | 金額 |
店舗、機械、備品、車両など (内訳) 店舗内外装工事 設備・備品類 保証金商品仕入、経費支払資金など (内訳) 広告費等諸経費支払 | 自己資金 親、兄弟、知人等からの借入 日本政策金融公庫からの借入 | ||
合計 | 合計 |
自己資金は、できれば必要な資金の3分の1から4分の1程度にする(もちろん、5分の1や6分の1程度でもOK)
現在は、日本政策金融公庫の融資の要件として開業資金の10分の1以上の自己資金があればいいということになっていますが、以前は、自己資金は開業資金の3分の1以上が必要でしたので、やはり3分の1や4分の1という数字はある一定の基準になると考えることができます。
また、実際にも、多くの借入れをすることは、開業後に利息と借入金の支払いが多くなり、キャッシュフローや財務状況に悪影響を与えてしまう可能性が予想されます。
つまり、「多額の借入れをして返済が多くなると、儲かっているのにお金が手元に残らないので経営がしんどくなる」ので、やはり、自己資金は開業資金の4分の1程度を準備するほうが安全です。
事業の見通しの書き方と書き方のポイント
創業当初 | 軌道に乗った後 | 計算の根拠 | |
売上高 | |||
売上原価 (美容室の場合には原則として仕入れはありません) | |||
人件費 | |||
家賃 | |||
支払利息 | |||
その他 | |||
合計 | |||
利益 |
事業の見通しは借入金の返済ができる計画になっているかどうかを意識して記載する
事業の見通しを記載する本当の理由は、売上の計算や経費の計算ではなく、問題なく借入金を返済できるかどうかを計算するためであると考えることができますので、そのことを意識して事業計画書を作成することによって融資される可能性を上げることができるでしょう。
なお、日本政策金融公庫の事業計画書ではすでに計算表が記載されてしまっていますが、これは少し書きにくいですので、オリジナルの計算表を作成するほうがいいかもしれません。
融資される可能性を上げるためには…
実は、日本政策金融公庫の美容室やエステサロンなど美容業の事業計画書の記載例には、右上のあたりにこのように記載してあります。
☆ この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です
つまり、事業計画書の用紙が小さいことを日本政策金融公庫もわかっているんです…
しかも、「☆」まで付けているわけですので、この注意書きの意味としては、「事業計画書の用紙が小さいことを日本政策金融公庫もわかっている」ということだと考えていいでしょう。