一般社団法人設立の特徴と設立手続きの流れなどをご説明いたします

まず、一般社団法人の特徴を理解しておきましょう

1.一般社団法人とは「非営利」の法人である

「非営利」とは…
収益活動によって生じた剰余金(売上−経費(人件費など)の利益)を理事や社員に配当として分配しないことを「非営利」といいます。

例えば、株式会社の場合には、収益活動によって生じた剰余金(売上−経費(人件費など)の利益)は株主に配当として分配されます。

つまり、株式会社は、剰余金を分配するための法人なので営利法人です。

収益活動によって生じた剰余金(売上−経費(人件費など)の利益)を

  • 分配する:営利法人(株式会社など)
  • 分配しない:非営利法人(一般社団法人など)

一般社団法人は、非営利法人ですので、剰余金(売上−経費(人件費など)の利益)を配当として分配はできませんが、理事や従業員の方に対して役員報酬やお給料などは支払うことはまったく問題はありません。

“まとめ
  • 収益活動をすること:OK(お金を稼ぐことはまったく問題ありません)
  • 役員報酬などを支払うこと:OK(理事や従業員の方にお金を支払うことはまったく問題ありません)
  • 剰余金を分配すること:NG(一般社団法人の活動費や次の事業の投資などに活用することになります)

小規模な株式会社などは、剰余金を配当として株主(ほとんどの場合、「株主=経営者」)に分配していないと思われますので、そういう意味では、「一般社団法人(もちろん配当してはいけません)≒株式会社」のイメージに近いかもしれません。

一般社団法人とは「役員報酬やお給料を支払ってもいいけど、利益を配当できない、公益性の高い会社(団体)」というイメージかもしれません。

2.「非営利型」の一般社団法人の場合には税制上の優遇があります

一般社団法人は、収益事業のみが課税となる(会費収入などには課税されない)「非営利型」の一般社団法人としての設立が可能です。

つまり、「非営利型」の一般社団法人は、NPO法人と同じ税制になります。

「非営利型」の一般社団法人が適しているのは、協会ビジネスや任意団体の法人化です

協会ビジネスなど、会員から入会金や会費を徴収する協会や学会などを法人化したい場合に適していると思われます。

また、任意団体を一般社団法人にする場合には、一般社団法人設立後に任意団体から財産の無償譲渡(寄付)を受ける場合に非課税にするために「非営利型」で設立することをおすすめいたします。

もし「普通法人型」で一般社団法人を設立してしまうと、任意団体から財産の譲渡を受ける場合に、一般社団法人が課税されてしまいますので注意が必要です。

非営利型の一般社団法人についてポイントをまとめておきます

非営利型の一般社団法人の要件

非営利型の一般社団法人は、「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」という2つのタイプにわかれていて、それぞれ要件が少し異なります。

1.非営利性が徹底された、非営利型の一般社団法人の要件(公益生が高い一般社団法人)

  1. 定款に、剰余金の分配を行わない旨の定めがあること
  2. 定款に、解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益社団法人又は公益財団法人に帰属する旨の定めがあること
  3. 各理事について、その理事及びその理事の配偶者又は3親等以内の親族その他のその理事と一定の特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が3分の1以下であること<つまり、非営利型の一般社団法人を設立するためには、少なくとも3人以上の理事を置く必要があります。>
  4. 上記(1)及び(2)の定款の定めに反する行為(上記(1)、(2)及び(3)に掲げる要件のすべてに該当していた期間において、剰余金の分配又は残余財産の分配若しくは引渡し以外の方法(合併による資産の移転を含む。)により特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと

2.共益的活動を目的とする、非営利型の一般社団法人の要件(協会ビジネスや会員ビジネスを行う一般社団法人)

  1. 会員の相互の支援、交流、連絡その他のその会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること
  2. 定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又はその金銭の額を社員総会の決議により定める旨の定めがあること
  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと
  4. 定款に、特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと
  5. 定款に、解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体又は公益社団法人又は公益財団法人又は類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと
  6. 各理事について、その理事及びその理事の配偶者又は3親等以内の親族その他のその理事と一定の特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が3分の1以下であること<つまり、非営利型の一般社団法人を設立するためには、少なくとも3人以上の理事を置く必要があります。>
  7. 上記(1)から(6)に掲げる要件のすべてに該当していた期間において、特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと

「理事と一定の特殊の関係のある方」とは…

  • 理事の配偶者
  • 理事の3親等以内の親族
  • 理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある方
  • 理事の使用人
  • 上記以外の方で理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している方
  • 上記の方と生計を一にする、上記の方の配偶者又は3親等以内の親族

非営利型の一般社団法人を設立する場合でも認定手続きなどは不要です

非営利型の一般社団法人の要件に該当する場合は、一切の手続を経ることなく、非営利型の一般社団法人になります。

逆に、非営利型の一般社団法人の要件のうち、ひとつにでも該当しなくなったときには、一切の手続を経ることなく、普通型の一般社団法人となってしまいますので注意が必要です。

なお、非営利型の一般社団法人になったとき又は非営利型の一般社団法人が普通型の一般社団法人になった場合は、税務署に「異動届出書」に提出する必要があります。

3.一般社団法人は事業内容の制限がありません

一般社団法人の場合は事業内容について法律上の制限がありませんので、適法である(公序良俗に反しない)限り、自由に事業を行うことが可能です。

このあたりは株式会社や合同会社などとほとんど同じだとお考えいただいていいと思われます。なお、NPO法人の場合は、主たる事業内容が法令に列挙された特定非営利活動に制限されます。

一般社団法人の事業内容
  • 公益事業(不特定多数人の利益に寄与することを目指す)
  • 共益事業(協会ビジネス、同窓会やサークルなど、特定の構成員や会員の利益や福利厚生を図る)
  • 収益事情(特定の個人や団体の利益を追求する)

なお、一般社団法人が収益事業を行って得た利益を法人の活動経費(役員報酬やお給料など)に充てることは問題ありません。(ただし、社員や理事に剰余金や残余財産の分配することはできません。)

4.一般社団法人の設立時に財産の拠出(資本金)は必要ありません

一般社団法人には、株式会社などのような「資本金」という概念はありません。

一般社団法人を運営するためには運営資金が必要ですので、一般社団法人には「基金」の制度があります

一般社団法人の場合には「基金≒資本金」のイメージでいいかもしれません。

基金として集めた金銭等の使途について制限がありませんので、一般社団法人の活動のために自由に活用することができます。

なお、基金の拠出者は,必ずしも一般社団法人の理事や社員でなくても問題ありませんので、理事や社員になる方が出してもいいですし、外部のスポンサーの方に出していただくこともできます。

5.NPO法人を設立するよりも一般社団法人設立にかかる期間がかなり短いです

一般社団法人は、公証役場の定款認証と法務局の登記だけで設立することができます。

なお、NPO法人の場合は設立するために4~6カ月かかりますので、それと比較すると、一般社団法人の場合はかなり短期間で設立が可能です。

6.一般社団法人を設立するには少なくとも2人が必要です

一般社団法人を設立するには、少なくとも社員が2人必要です。

一般社団法人の社員とは…
「社員」とは、社員総会で議決権を持つ人のことであり、「従業員」という意味ではありません。

株式会社の株主(発起人)に近いイメージかもしれません。
そのほうが理解しやすいと思われます。

なお、NPO法人を設立する場合は、社員が少なくとも10名必要です。

ここから一般社団法人の設立を具体的に考えていきましょう

一般社団法人の機関設計は以下の5パターンあります
  1. 社員総会+理事
  2. 社員総会+理事+監事
  3. 社員総会+理事+監事+会計監査人
  4. 社員総会+理事+理事会+監事
  5. 社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

小規模な一般社団法人を設立する場合には上記1のパターンになります

  1. 2人が設立時社員になる(社員2人の社員総会)
  2. 2人とも何らかの肩書きが必要なら2人とも理事になる
  3. そのうちのどちらかが代表理事になる

こんなカンジです。

上記の通り、2人いれば一般社団法人の設立が可能です

ただし、税制上の優遇がある「非営利型」の一般社団法人(会員から会費を徴収する場合など)を設立する場合は、理事が3人必要ですので、社員が理事を兼ねる場合でも少なくとも3人が必要となります。

また、理事会設置の一般社団法人(上記4のパターン)を設立する場合は、理事3名と監事1名が必要です。なお、理事と監事は兼任できませんので、社員が理事又は監事を兼ねる場合でも少なくとも4人が必要となります。

なお、法人(株式会社など)は、一般社団法人の社員になることはできますが、理事や監事になることはできません。

まとめると…

「普通法人型」の一般社団法人少なくとも2人
「非営利型」の一般社団法人少なくとも3人
「理事会設置型」の一般社団法人少なくとも4人

一般社団法人の理事の任期は約2年です

一般社団法人の理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで(定款又は社員総会の決議によって,その任期を短縮することができます。)です。

一般社団法人の監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで(定款によって,その任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することができます。)です。

一般社団法人の解散についても少し理解しておきましょう

一般社団法人は次の場合に解散することとされています

  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 社員総会の決議
  • 社員が欠けたこと(社員が1人になった場合でも解散しませんが、0人になった場合には解散します)
  • その一般社団法人が消滅する合併をしたとき
  • 破産手続開始の決定があったとき
  • 解散命令又は解散の訴えによる解散を命ずる裁判があったとき
注意
長期間変更の登記がされていない、いわゆる休眠一般社団法人(当該一般社団法人に関する登記が最後にあった日から5年を経過した場合)は、法人制度の濫用や悪用の弊害を防ぐため、解散したとみなされ、その旨の登記がされることとされていますので注意が必要です。