以下に該当する場合には取締役になることができません
- 法人<取締役は自然人のみ。cf 持分会社の社員は法人でもOK>
- 成年被後見人・被保佐人<未成年・被補助人は取締役になれる>
- 会社法・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律・金融商品取引法・会社更生法・破産法などの罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年経過していない。
<会社法等の違反は、罰金刑、執行猶予でもダメ。終わってから2年間もダメ。cf 破産者は取締役になれる。> - 上記以外の刑によって禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、またはその執行を受けることがなくなるまでのの者(執行猶予期間中の者を除く)
<会社法等以外は、罰金刑、執行猶予はOK。2年間もない。>
公開会社は、取締役を株主に限定することができない。公開性。<譲渡制限会社は、定款で、取締役を株主に限定することができる。閉鎖性。>
取締役の報酬はどうやって決めるの?
取締役の報酬や賞与は、定款の定めがなければ株主総会で決める。
<まずは、定款。なければ株主総会。取締役会で定めることはできない。取締役にストックオプションを付与する場合には株主総会決議が必要。>
金額を確定させてもいいし、算定方法を定めてもいい。
なお、監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役の報酬を区別して定める必要あり。
取締役を選んだり辞めてもらったりするにはどうするの?
取締役の選任と解任のルール
取締役会の選任 | 株主総会普通決議 (議決権行使できる議決権の過半数出席、その過半数<議決権、過半数>) |
取締役会の解任 | 株主総会普通決議 |
取締役は選任も解任も株主総会普通決議。
- 役員(取締役・監査役・会計参与<会計監査人を除く>)の選任解任について、定款によって、定足数を議決権の3分の1以上とすることができる。
<他の普通決議は、定款によって定足数の排除も可能。役員の選任解任は3分の1までしか下げられないということ。> - 役員(取締役・監査役・会計参与)の選任解任について、定款によって、決議要件を加重できる。
※監査役と監査等委員である取締役には例外あり。
取締役の解任はいつでもできる。でも…
役員(取締役・監査役・会計参与)と会計監査人は、いつでも、正当事由がなくても解任できる。<監査人は、監査役全員の同意によって、会計監査人を解任することも可能。指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社も同じ。>
でも、役員(取締役・監査役・会計参与)と会計監査人は、解任について正当な理由がある場合を除いて、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償請求ができる。<委任の規定>
つまり、役員(取締役・監査役・会計参与)と会計監査人は、いつでも、正当事由がなくても解任できるが、役員(取締役・監査役・会計参与)と会計監査人は、解任について正当な理由がある場合を除いて、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償請求ができる。
株主による取締役解任の訴えも可能
訴えを提起できる株主 |
または 定款で100分の3を緩和できる。 |
取締役解任の訴えの流れ |
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cf 株主による株主総会招集権は、(公開会社は6か月前から)総株主の議決権の100分の3以上を有する株主。定款によって、6か月未満、100分の3未満にできる。
取締役の累積投票制度って…何?
取締役を2人以上選任する場合、例えば、取締役3人を選任する場合に1株(または1単元)あたり3つの議決権が与えられ、それを1人の取締役に集中して投票することができる。というのが取締役の累積投票制度。<少数派株主保護>
- 創立総会においても累積投票制度あり
- 監査役・会計参与・会計監査人には累積投票制度なし<取締役のみ>
- 定款によって累積投票制度を排除可能
- 累積投票によって選任された取締役を解任する場合には、株主総会特別決議が必要
<cf 監査等委員である取締役の解任も特別決議。指名委員会等設置会社の監査委員である取締役の解任は普通決議。>
指名委員会等設置会社の取締役
取締役会は、権限を大幅に執行役に委譲することができる<取締役は委員会のメンバーとして会社を監視する>
指名委員会等設置会社の取締役は、その会社の支配人その他の従業員を兼ねることができない。(監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役もその会社または子会社の支配人その他の従業員を兼ねることができない)
<そりゃ、そんなことしてたら会社を監視できないからね。なお、一般的な株式会社の形態の取締役は取締役が従業員を兼ねていてもOK。つまり、監視役か業務執行機関かということ。>
取締役の任期はどうなってる?
取締役の任期
取締役の任期 | 選任後<就任承諾日がズレていても選任から。登記簿には就任日が記載される>2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで 補欠の役員の任期も選任から起算<実際に役員になったときからではない>
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指名委員会等設置会社の取締役の任期 | 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで | |
監査等委員会設置会社の取締役の任期 | 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで<指名委員会等設置会社の取締役と同じ> <監査等委員である取締役の任期は2年> |
取締役の任期が途中で終了することがある!
ざっくりいうと、会社の形態が変わるときに取締役の任期が途中で終了する。
旧来型の株式会社の形態 ↓ 指名委員会等設置会社 監査等委員会設置会社 | 指名委員会等または監査等委員会を設置するための定款変更の株主総会決議の効力発生によって取締役の任期が終了 |
指名委員会等設置会社 監査等委員会設置会社 ↓ 旧来型の株式会社の形態 | 指名委員会等または監査等委員会を設置する定款の定めを廃止する株主総会決議の効力発生によって取締役の任期が終了 |
発行する株式の全部につき、譲渡制限規定を廃止する定款変更の効力発生によって取締役の任期が終了<発行株式すべての譲渡制限を廃止> |
取締役の業務執行と取締役の責任
取締役の代表権と業務執行
取締役会がない場合 | 各自代表の原則<定款に別段の定めがなければ…> 取締役が2人以上の場合、会社の業務は原則として取締役の過半数の一致で決定 代表取締役の選定も可能<他の取締役の代表権限を制限>
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取締役会設置会社 | 取締役会は取締役の中から代表取締役選定しなければならない。
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cf 表見代表取締役:社長、副社長などの名称を付した場合、会社は善意の第三者に対して責任を負う
取締役は会社に忠実でなければいけない
忠実義務あり | 取締役、執行役、清算人 <監査等委員である取締役にも忠実義務あり> |
忠実義務なし | 監査役、会計参与、会計監査人 |
取締役は競業取引や利益相反取引する場合に承認を受けなければならない
取締役会設置会社 | 取締役会の承認 取締役は、取締役会に事後報告義務あり |
取締役会を設置していない場合 | 株主総会普通決議 事後報告義務なし |
自己のために利益相反取引にうち直接取引をした取締役(執行役)の責任は無過失責任<一部免除なし。総株主の同意による責任免除しかない>
会社は、善意の第三者に対して、取締役会(株主総会)の承認の欠缺による無効を主張できない。
競業取引や利益相反取引の制限あり | 取締役、執行役、清算人 <監査等委員である取締役にも忠実義務あり> |
競業取引や利益相反取引の制限なし | 監査役、会計参与、会計監査人 |
取締役は株主への利益供与と剰余金分配(タコ配当)をすると責任があります
株主への利益供与 |
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剰余金分配(タコ配当) |
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会社と取締役との間で訴訟になることもあるよね…
この場合、会社を代表するのは?
- 株主総会で代表を定めることができる
- 取締役会設置会社では、株主総会で代表を定めない場合には、取締役会で定めることができる
- 監査役設置会社では、1、2にかかわらず、監査役が代表する
- 監査役を設置していない会社では、1、2がなければ代表取締役が代表する
指名委員会等設置会社(監査等委員会設置会社)では…
- 監査委員会(監査等委員会)が選定する監査委員(監査等委員)が代表する
訴訟当事者が監査委員(監査等委員)の場合は、株主総会で定めた者が代表する(これがいない場合には取締役会が定める者が代表する)
株主が取締役の行為の差止請求ができるんだね…
取締役の行為差止請求できる株主とは…?
1株でも持っている株主(公開会社では6か月前から)
どういうときにできる?
取締役が法令または定款違反の行為をして、または、このような行為をするおそれがあり、会社に<著しい損害>が生じるおそれがあるとき
なお、監査役設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社(公開会社はこのいずれかになるはず。監査が必要。)は、<回復することができない損害>が生じるおそれがあるときに、株主は取締役の行為差止請求ができる。(この場合、担保は不要)
<会社に<著しい損害>が生じるおそれがあるときは、監査役、監査委員などが取締役の行為差止請求権を持っている>
取締役の職務代行者選任の仮処分申請もできるんだって
職務代行者は、会社の常務に属しない行為をする場合には裁判所の許可が必要となります。
登記申請は常務に属する。<だから印鑑届もできる。>