経営者必見!フレックスタイム制の清算期間や残業などについて社会保険労務士がご説明いたします

フレックスタイム制とは…

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員の方が始業時刻、終業時刻や労働時間を自分で決めることのできる制度です。

フレックスタイム制を導入するメリット

フレックスタイム制を導入すると、あらかじめ総労働時間を決めた上で、従業員の方が日々の出退勤時刻や労働時間を自由に決めることができるようになりますので、従業員の方はプライベートと仕事とのバランスがとりやすくなりますので、従業員の方が働きやすくなり、離職率の低下を期待することができます。

今回の働き方改革による法改正によって、労働時間の調整を行うことのできる清算期間が3か月まで延長されたことによって、従業員の方がより柔軟な働き方の選択が可能となりました。

フレックスタイム制を導入するには「就業規則への規定」と「労使協定の締結と労働基準監督署への届出」が必要です

就業規則への規定

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則に「始業時刻と終業の時刻を従業員の方の決定に委ねる」旨を定めなければいけません。

なお、その他の事項については労使協定で定めることにしてもいいでしょう。

労使協定の締結と労働基準監督署への届出

フレックスタイム制の清算期間が1か月を超える場合には「労使協定の締結」に合わせて「労働基準監督署への届出」が必要です。

清算期間が1か月を超える場合には、労使協定を労働基準監督署に届け出る必要があり、これに違反すると30万円以下の罰金が科せられることがあります。

なお、清算期間が1か月以内の場合には労働基準監督署への届出は不要です。

多くの場合、清算期間を3か月に設定されると思われますので、フレックスタイム制を導入するには、「就業規則への規定」と「労使協定の締結と労働基準監督署への届出」が必要だとお考えいただくといいと思われます。

フレックスタイム制の内容について労使協定で定めます

労使協定で定める内容
  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間
  • 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  • 標準となる1日の労働時間
  • コアタイム(任意)
  • フレキシブルタイム(任意)

対象となる労働者の範囲

フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲は、全従業員とすることも可能ですし、各人ごと、課ごと、グループごとなどにすることも可能です。

清算期間

労使協定によって「清算期間の起算日」と「清算期間の長さ」を定めます。

清算期間とは、従業員の方がフレックスタイム制で労働すべき時間を定める期間のことです。

清算期間は、これまで上限は1か月でしたが、法改正によって上限が3か月となりましたので、より柔軟な働き方が可能になります。

なお、フレックスタイム制の清算期間が1か月を超える場合には「労使協定の締結」に合わせて「労働基準監督署への届出」が必要です。

清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)

フレックスタイム制では、清算期間を単位として所定労働時間(従業員の方が清算期間において労働すべき時間)を定めます。

注意
清算期間における総労働時間を定める際には、以下のとおり法定労働時間の総枠の範囲内にしなければなりません。

清算期間における総労働時間の計算方法

清算期間における総労働時間 ≦ 清算期間の暦日数 × 1週間の法定労働時間(40時間)× 清算期間の暦日数/7日

月単位の清算期間とした場合の法定労働時間の総枠は、以下の法定労働時間の総枠の範囲内で総労働時間を定めなければいけません

1か月単位

清算期間の暦日数法定労働時間の総枠
28日160.0時間
29日165.7時間
30日171.4時間
31日177.1時間

2か月単位

清算期間の暦日数法定労働時間の総枠
59日337.1時間
60日342.8時間
61日348.5時間
62日354.2時間

3か月単位

清算期間の暦日数法定労働時間の総枠
89日508.5時間
90日514.2時間
91日520.0時間
92日525.7時間
MEMO
特例措置対象事業場については、清算期間が1か月以内の場合には週平均44時間までとすることが可能ですが、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場であっても、週平均40時間を超えて働いてもらう場合には36協定の締結と労働基準監督署への届出に合わせて、割増賃金(残業代)の支払が必要です。

※特例措置対象事業場とは、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことをいいます。

標準となる1日の労働時間

フレックスタイム制の対象となる従業員の方が有給休暇を1日取得した場合には、その日については、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱う必要がありますので、標準となる1日の労働時間を定めます。

コアタイム(任意)

コアタイムは労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯のことをいいます。

必ず設定しなければならないものではありませんが、コアタイムを設定する場合には、コアタイムの開始時刻と終了時刻を労使協定で定める必要があります。

なお、コアタイムの時間帯は労使協定で自由に定めることができ、「コアタイムを設ける日と設けない日がある」「日によって時間帯が異なる」ことも可能です。

フレキシブルタイム(任意)

フレキシブルタイムは、従業員の方が労働時間を自由に決定することができる時間帯のことをいいます。

コアタイムと同じで、必ず設定しなければならないものではありませんが、フレキシブルタイムを設定する場合には、フレキシブルタイムの開始時刻と終了時刻を労使協定で定める必要があります。

コアタイムと同じで、フレキシブルタイムの時間帯も労使協定で自由に定めることができます。

フレックスタイム制を導入した場合には、清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不足に応じて、以下のように賃金の清算を行う必要があります

清算期間における総労働時間 < 清算期間における実労働時間の合計

→超過した時間分の賃金清算(残業代の支払い)が必要です

清算期間における総労働時間 > 清算期間における実労働時間の合計

→次のどちらかになります

  • 不足時間分の賃金を控除して支払い
  • 不足時間を繰り越して、次の清算期間の総労働時間に合算

フレックスタイム制における割増賃金(残業代)の支払い

フレックスタイム制を導入した場合には、清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働(残業)となりますので、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働した場合でも、 ただちに時間外労働(残業)とはなりません。

清算期間が1か月を超える場合には次の2つの要件を満たさなければならず、いずれかを超えた時間は時間外労働となり、割増賃金(残業代)の支払いが必要となります

  • 清算期間全体の労働時間が週平均40時間
  • かつ

  • 1か月ごとの労働時間が週平均50時間

なお、特例措置対象事業場については、清算期間が1か月以内の場合には週平均44時間までとすることが可能ですが、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場の場合でも週平均40時間を超えて労働させる場合には36協定の締結・労働基準監督署への届出と、割増賃金(残業代)の支払が必要です。

清算期間を3か月とした場合の時間外労働のイメージ

時間外労働(残業代)が発生しないパターン
  • 3か月の労働時間が平均して週40時間以内
  • かつ

  • 1か月ごとの労働時間が週平均50時間以内
時間外労働(残業代)が発生するパターン
  • 法定労働時間の総枠を超過(3か月の労働時間が平均して週40時間を超過)する場合
  • または

  • 1か月の労働時間が週平均50時間を超過する場合

なお、清算期間が1か月を超える場合に、中途入社や途中退職など実際に労働した期間が清算期間よりも短い従業員の方については、その期間について労働時間を清算しますので、実際に労働した期間を平均して週40時間を超えて働いた場合には、その超えた時間について割増賃金(残業代)の支払いが必要です。

また、フレックスタイム制において休日労働(1週間に1日の法定休日に労働すること)を行った場合には、休日労働の時間は、清算期間における総労働時間や時間外労働とは別のものとして取り扱われますので、35%以上の割増賃金の支払いが必要となります。