1年単位の変形労働時間制の協定書、カレンダーと協定届は社会保険労務士にお任せください

1年単位の変形労働時間制を導入すると残業代の削減が可能になります

1年単位の変形労働時間制とは、1か月を超え1年以内の一定の期間を平均して、1週間の労働時間を40時間以下にする場合には、特定の日や特定の週について1日8時間及び1週間40時間の法定労働時間を超えて労働してもらうことができる制度です。(労働基準法第32 条の4)

つまり、1年単位の変形労働時間制とは…
1年365日の場合には1年の総労働時間を2,085.71時間以内になるように1年間のシフトを設定すると、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えて働いてもらったとしても割増賃金(残業代)の支払いをする必要がないという制度なんです。

そもそも会社側から見ると法定労働時間(1日8時間、週40時間)はデメリットがあるんです

例えば…

1日の所定労働時間が8時間で週休2日と祝祭日がお休みの会社の場合には、祝祭日がある週はお休みが3日で週4日の勤務になります。

所定労働時間が8時間の場合、この週は4日×8時間で所定労働時間は32時間となります。

しかし、この4日の労働時間が毎日9時間になった場合、この週の労働時間は36時間にもかかわらず、会社は1日8時間を超えた4時間分について割増賃金(残業代)を支払う必要があります。

実は、1年間の祝祭日は20日くらいあるんです

1年間に祝祭日が20日あるということは、1か月4週と考えると、半分近くの週は1週間の勤務日数は4日になります。

さらに、ゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始の場合には、勤務日数が3日以下になる週もいくつかあります。

法定労働時間のデメリット

会社側にとって、1週間の労働時間は40時間未満なのに、1日の労働時間が8時間を超えるために割増賃金(残業代)を支払う必要があります。

1年単位の変形労働時間制のメリット
1年の中で「繁閑の差の平均化」「祝祭日などのお休みが多い月とその他の月の平均化」をすることによって、各月の所定労働時間を長く取ることができますので、割増賃金(残業代)の削減効果が期待できます。

1年単位の変形労働時間制の導入方法について見ていきましょう

1年単位の変形労働時間制を導入するには、次の5項目について「労使協定」を締結する必要があります

労使協定の項目
  • 対象労働者の範囲
  • 対象期間(1箇月を超え1年以内の期間)及び起算日
  • 特定期間
  • 労働日及び労働日ごとの労働時間
  • 労使協定の有効期間

また、常時10人以上の労働者を使用している場合は、1年単位の変形労働時間制を導入することを記載した就業規則を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

1.対象労働者の範囲

1単位の変形労働時間制を導入するにあたり、労使協定によって、対象となる労働者の範囲を明確にしなければいけません。

勤務期間が対象期間に満たない途中採用者や途中退職者の方も、賃金の精算を条件に1年単位の変形労働時間制の適用が認められています。

なお、妊産婦が請求した場合には、週40時間、1日8時間以内でしか労働させることはできませんので、1年単位の変形労働時間制で労働させることはできません。

2.対象期間及び起算日

1年単位の変形労働時間制の対象期間は「1か月を超え1年以内の期間」です。なお、最長1年間ですので、対象期間を3か月や6か月などにすることも可能です。

3.労働日及び労働日ごとの労働時間

1年単位の変形労働時間制を導入するにあたり、労使協定によって、対象期間の労働時間が平均して週40時間を超えないように、対象期間の全期間について、各日、各週の所定労働時間を定めなければいけません。

ただし、対象期間を1か月以上の期間に区分する場合には、最初の期間についてのみ、各日、各週の所定労働時間を定めておくだけでよく、その後の各期間については、各期間の総労働時間を定めればよいこととなっています。

この場合でも、その期間の労働日と労働日ごとの労働時間については、その期間の始まる少なくとも30日前に、労働者の過半数を代表する者の同意を得て、書面によって定めなければなりません。

[参考例]4月1日を起算日とする1年単位の変形労働時間制を導入する場合

最初の期間
(4月1日から4月30日)
  • 労働日
  • 各労働日ごとの労働時間
(つまり、シフトカレンダー)
2か月目
(5月1日から5月31日)
  • 労働日数
  • 総労働時間
なお、3月31日(5月1日の30日前)までに、シフトカレンダー(労働日と各労働日ごとの労働時間)を決定しておく必要があります。
3か月目
(5月1日から5月31日)
  • 労働日数
  • 総労働時間
なお、5月1日(6月1日の30日前)までに、シフトカレンダー(労働日と各労働日ごとの労働時間)を決定しておく必要があります。
4か月目以降
  • 労働日数
  • 総労働時間
なお、その期間が始まる少なくとも30日前までに、シフトカレンダー(労働日と各労働日ごとの労働時間)を決定しておく必要があります。

対象期間を通した「所定労働時間の総枠」の計算式は次の通りです

所定労働時間の総枠の計算式
所定労働時間の総枠=40時間×(対象期間の暦日数/7)

なお、この計算式で計算すると、対象期間において所定労働時間として設定できる労働時間の総枠は次の時間になります

対象期間所定労働時間の総枠の上限
1年(365日)2,085.71時間

労働基準監督署へ労使協定の届出

労働基準監督署に提出するもの
  • 1年単位の変形労働時間制に関する協定届
  • 労使協定書
  • 対象期間中の労働日および時間がわかる勤務シフト
  • 就業規則の変更がある場合は、就業規則と労働者代表の意見書

いずれも、提出用と会社控え用の2部ずつが必要です。

1年単位の変形労働時間制の注意点

1.労働日数の限度

対象期間における労働日数の限度は、原則として1年間280日となります。なお、対象期間が3か月以内の場合には労働日数の制限はありません。

なお、対象期間が1年未満の場合は下記計算式で上限日数が決まります

労働日数の限度の計算式
労働日数の限度=280日×対象期間中の暦日数÷365日(又は366日)

[参考例] 4月1日から9月30日までの6か月間の労働日数の限度

4月1日から9月30日までの6か月間の暦日数は183日となりますので、労働日数の限度は「280日×183日÷365日=140日」となります。

ただし、前年度において1年単位の変形労働時間制を協定している場合(以下「旧協定」といいます。)において、旧協定の1日または1週間の労働時間よりも新協定の労働時間を長く定め、及び1日9時間又は1週48時間を超える場合には、労働日数の限度は、280日又は旧協定の労働日数から1日をマイナスした日数のうちいずれか少ない日数としなければなりません。

2.1日及び1週間の労働時間の限度

1年単位の変形労働時間制の労働時間は、一般的な会社の場合、1日10時間、週52時間が限度です。

なお、対象期間が3か月を超える場合には次のような制限があります

  • 週48時間を超える所定労働時間を定めた週が連続3以内であること
  • 対象期間を初日から3か月ごとに区切った各期間において、週48時間を超える所定労働時間を定めた週が3以内であること

3.対象期間における連続労働日数

連続労働日数は原則として最長6日までです。

ただし、「特定期間」を設ければ、1週間に1日の休日が確保できる日数(最長12日)とすることができます。

特定期間とは…
特定期間とは、対象期間のうち特に業務が繁忙な時期として労使協定で定めた期間をいいます。

なお、対象期間のうち相当部分を特定期間として定める労使協定は、法の趣旨に反して認められません。

また、一旦協定した特定期間を対象期間の途中で変更することも認められません。

4.割増賃金の支払い

1年単位の変形労働時間制を導入した場合でも、当然ながら割増賃金(残業代)の支払いが必要となりますので注意が必要です。

(1)または(2)で時間外労働となる時間を除きます。

(1)1日の法定時間外労働
  • 労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間
  • それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
(2)1週間の法定時間外労働
  • 労使協定で週40時間を超える時間を定めた週はその時間
  • それ以外の週は週40時間を超えて労働した時間
(1)で時間外労働となる時間を除きます。
(3)対象期間の法定時間外労働対象期間の法定労働時間総枠を超えて労働した時間

対象期間の中途で採用や退職する従業員の割増賃金の計算

1年単位の変形労働時間制の対象期間より短い期間の労働をした従業員の方に対しては、実際に働いてもらった期間を平均して週40時間を超えた労働時間について割増賃金を支払うことが必要です。

なお、割増賃金の清算を行う時期は、途中採用の場合は対象期間が終了した時点、退職者の場合は退職した時点となります。

割増賃金の計算式
割増賃金を支払う時間=実労働期間における実労働時間ー実労働期間における法定労働時間の総枠ー実労働期間における上記1・2の時間外労働

5.育児や介護などをしている従業員の方に対する配慮

1年単位の変形労働時間制を導入する場合においても、育児や介護をしている従業員の方、職業訓練などを教育を受けている従業員の方に対して、育児等に必要な時間を確保できるよう配慮する必要があります。

1年単位の変形労働時間制の場合でも休日を振り返ることができます

対象期間中の振替休日の要件
  • 就業規則に振替休日に関する規定があること
  • あらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えること
  • 対象期間(特定期間を除く)において連続労働日数が6日以内となること
  • 特定期間においては1週間に1日の休日を確保すること

最後に…

お願い

当事務所(社会保険労務士)としては、従業員の方に対して残業代を支払わずにもっと働いてもらうことをおすすめしているわけではありません。

  • しっかり労務管理をする
  • そして、支払うべきものはしっかり支払う

ということが大前提ですので、その点は誤解なさらないようお願いいたします。